現在、日本の総窒素の放流基準は非常に緩い設定値になっています。ですが諸外国の厳しい基準値に合わせ、日本でも放流基準が今後厳しくなる方向に進んでいくことが推測されます。
また、一般的な窒素処理でコストが嵩んでいるというご相談も多く頂いており、お早めの対策をご提案しております。
このページでは窒素処理の概要をご説明します。
排水中の窒素に関する基礎知識
排水中の窒素
水中で窒素は
- 有機窒素(O-N)
- アンモニア態窒素(NH4-N)
- 亜硝酸態窒素(NO2-N)
- 硝酸態窒素(NO3-N)
という4つの形態に分かれて存在し、それらをまとめて“総窒素(T-N)”といいます。
水中で“酸化反応”が進んでいくに従って、
有機窒素 → アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素
と形態を変化させます。
窒素の中ではアンモニアが有名ですが、アンモニアが検出されないからと言って水中から窒素がないとは言い切れません。
排水中の窒素除去の必要性
「富栄養化」の問題
河川の水域及び海域の富栄養化が問題になっています。
栄養素は大きく分けると以下の3つになります。
- 有機物 …動物の栄養源
- 窒素 …植物の栄養素
- リン …植物の栄養素
植物性プランクトンの大量発生がアオコや赤潮の原因となりますし、植物性プランクトン<動物性プランクトンという食物連鎖に準じて、微生物の大量発生原因となります。
水系の中で微生物の大量発生が生じると、水中の酸素が欠乏し、魚や小動物の棲めない環境に変化したり硫黄酸化物の発生原因となります。
日本の窒素の放流基準
日本はアンモニア態窒素の規制値は設定していますが、総窒素の規制は場合によっては設定されていなかったり、設定されていたとしても非常に緩い設定値になっています。
- 総窒素の放流基準(日本): < 100
- 総窒素の放流基準(韓国): < 25
- 総窒素の放流基準(中国): < 15
ただし、諸外国の放流基準値との整合性が保てないため、この放流基準は今後厳しくなっていく方向に進んでいくものと容易に推測されます。
脱窒とは
脱窒とは、現状では一般的に硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理の事を指します。
アンモニア態窒素を処理したからと言って脱窒とは言えませんし、排水中の窒素の状態が全てアンモニア態窒素であれば脱窒処理は出来ません。
排水中の窒素は、先ず有機窒素をアンモニア態窒素に、アンモニア態窒素は亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素に硝化させた後、初めて脱窒反応処理が出来るのです。
排水中の脱窒方法
脱窒には次の3つの方法があります。
- イオン交換処理
- 生物処理(従属栄養細菌)
- 生物処理(独立栄養細菌)
「イオン交換樹脂を使った脱窒方法」は、その処理効果は計算式にて簡単に算出できる安定した処理システムの構築が可能ですが、ランニングコストやイニシャルコストが非常に高価なため量の小さい環境に使用が制限されます。
一般的な脱窒処理「従属栄養性脱窒」
通性嫌気処理によって行われる脱窒は、従属栄養性脱窒菌という微生物の働きを利用します。日本ではこの細菌を使った「従属栄養性脱窒」しか存在していないと言っても過言ではありません。
窒素除去(硝酸態窒素もしくは亜硝酸態窒素処理)の為には、必ず一定の有機炭素源とリンが必要であり、その割合は
炭素(C):窒素(N):リン(P)=100:5:1
と決まっています。
5ユニットの窒素処理をする為には、必ず100ユニットの有機炭素源が必要なのです。排水処理の現場では、このC(炭素源)をCOD(化学的酸素要求量)やBOD(生物的酸素要求量)に置き換えて計算しています。
「従属栄養性脱窒」のメリット
- イニシャルコストが低い
- 比較的容易に運用可能
「従属栄養性脱窒」のデメリット
- ランニングコストがかかる
畜産糞尿の処理場など、C/N/P比がとてもいびつで極端にN値が高い排水があります。一般的な従属栄養性脱窒方法では、N値(窒素)を処理する為に汚染物質(富栄養化の素)である有機炭素源(メタノールやブドウ糖)をわざわざ排水に注入しながら脱窒処理を行う必要が生じ、高コストにつながります。
- 高レベルの処理が難しい
ある程度の放流基準までは有効に機能しますが、韓国や中国のような厳しい放流基準値を満たす運用は非常に困難を伴います。また、高濃度の窒素が排水中に混入している場合にも処理が難しくなってしまいます。
弊社脱窒システムが採用する「独立栄養性脱窒」
一般的な「従属栄養性脱窒」に対して、脱窒反応に有機炭素源の供給を必要としない「硫黄酸化脱窒細菌」等は独立栄養性細菌に分類されます。
独立栄養性細菌である硫黄酸化細菌が通性嫌気状態(無酸素状態)で水中にあり、なおかつその環境の中に硫黄(S)と硝酸態窒素(NO3-N)が同時に存在するとき、この細菌の代謝反応に硝酸態窒素の“O3”と硫黄(S)が使われ、硝酸態窒素の“N”は窒素ガスとして水中から“排気”され、その際副産物として硫酸イオン(SO42-)が生じる、という反応が起きます(下記反応式参照))。
NO3– + 1.10S + 0.40CO2 + 0.76H2O + 0.08NH4+ →
0.50N2 + 1.10SO42- + 1.28H+ + 0.08C5H7O2N
弊社脱窒システムはこの独立栄養性細菌の反応を利用した脱窒システムです。
「独立栄養性脱窒」のメリット
有機炭素源の供給を必要としないため、ランニングコストを抑えられます。
「独立栄養性脱窒」処理が一般的でない理由
硫黄酸化脱窒細菌を使用した脱窒処理については、長年色々な機関で研究が進められてきました。
- チオ硫酸ナトリウム液を硫黄源として連続点滴注入する方式。
- 粉末の硫黄を連続注入添加する方式。
- ペレット状の硫黄を反応槽に充填して排水を接触処理する方式。
- 顆粒状の硫黄を反応槽に入れておき、攪拌機等により排水との接触効率を計る方式。
ただし、どの方法も実験室では目覚ましい効果を上げるものの、実際に現場で試してみると以下のような理由で上手く機能しません。
- 流入硝酸態窒素濃度の変動に対する、消費(添加)硫黄源の制御が困難。
- 硫黄の消費に伴い硫酸塩が発生し、pHに多大な影響を及ぼす。
弊社の脱窒システムはこれらの課題を解決した高効率なシステムです。